増え続ける「セルフネグレクト」を防ぐためにできることは何か?

目次

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neglect(ネグレクト)。

この言葉は現在では主に、育児放棄、虐待などの意味で使われています。養育しなければならない子どもの保護義務を放棄。食事、衣服、治療、教育の機会などを十分に与えず、心身の健全な発達を妨げている状態をあらわします。

ネグレクトによりトラブルが起きたり、子どもが危険な目に合うような事件も多発しており、大きな社会問題となっています。

 

そして、子どもへのネグレクト問題に加え、注目を集めているのが「セルフネグレクト」問題です。全国で少なくとも1万人以上の人がセルフネグレクトと呼ばれる危険な状態にあり、助けを必要としています。また、セルフネグレクトはごみ屋敷を引き起こす要因のひとつとも考えられており、地域社会への影響も問題になっているようです。

セルフネグレクトとは、具体的にどのようなものなのでしょうか? セルフネグレクトを引き起こさないためにできることは何でしょうか。

大きな注目を集める、セルフネグレクト問題について考えてみたいと思います。

 

 

1.「セルフネグレクト」がごみ屋敷を引き起こす?

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セルフネグレクトという言葉を初めて聞くという方もいらっしゃると思います。

子どもに対するネグレクトというものを知っていれば、「自分に対するネグレクトっていう意味?」と、察することができるかもしれません。

 

自分自身の面倒を見ない。生活環境や食事、身だしなみやさまざまなケア、持ち物や家の管理、周りの人と関わることを積極的に行おうとせず、それによって、危険な状態にまで陥っていること。そして、誰にも助けを求めない。

このような状態を、セルフネグレクトといいます。

 

<セルフネグレクトの特徴>

・まともな食事をとらない
・汚れたり破れた服装で過ごす
・不衛生な環境で生活する
・具合が悪くても病院に行かない
・外出しない
・人と接することを避ける

 

セルフネグレクトとごみ屋敷問題の関係

大きな社会問題となっているごみ屋敷問題。ごみ屋敷状態を引き起こす原因のひとつに、その家の住人がセルフネグレクトに陥っているケースがあるといわれています。

セルフネグレクトの状態になると、掃除やごみ捨てをして生活環境を整えることが難しくなり、外出することや近隣の人との関わりもほとんどなくなってしまいます。家の中が汚れ、ごみが溜まり、やがて危険な状態になっても助けを求めることができないので、最終的にごみ屋敷になってしまう。

すべてのごみ屋敷の原因がセルフネグレクトであるということではないのですが、ごみ屋敷を作りだしてしまっている方の多くが、セルフネグレクトに近い状態に陥ってしまっているのではないかと考えられています。

 

 

2.増えつつある「セルフネグレクト」の実態

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前の章で、セルフネグレクトに陥っている人の特徴をご紹介しました。

こういった状況にある方たちは、昔はいなかったというわけではありません。地域の方たちのサポートでなんとか生活できていたケースや、残念ながら孤独死してしまったケースもあったと思いますが、今まではそれほど大きく注目されることはありませんでした。

セルフネグレクトという名前で呼ばれるようになったことでメディアにも取り上げられるようになり、メジャーなテレビ番組で特集されるまでになりました。

 

セルフネグレクトの状態に陥ってしまう理由は、いくつかあります。

精神疾患などによるもの、知らないうちに認知症が進んでしまったケース、病気やケガで体が思うように動かせなくなったケース。そして、大きな要因のひとつではないかと考えられているのが、何かを失ったことによるショック、喪失感です。

年配の方が配偶者を亡くしたあと無気力状態になり、社会との関わりを無くしてそのままセルフネグレクトになってしまうケースが多発しています。

 

セルフネグレクトから抜け出せなくなる理由

家の中が汚れてごみがあふれ、食事や、お風呂に入ったりすることもままならなくなってきたときに、家族や誰かに助けを求めることができれば、深刻なセルフネグレクトの状態にならずにすむかもしれません。

しかし多くの場合、自分から助けを求めることはありません。それには、次のような理由が考えられます。

<助けを求めることができない理由>

・自分が危険な状態にあることに気づかない
・助けを呼ぶ気力がない
・助けを求める相手がいない
・助けを求める方法がわからない
・迷惑をかけたくないと思っている
・困っていることを知られなくない
・助けを求めることを拒否している

 

セルフネグレクトになる人が増えている?

日本では、1年間におよそ3万人の人が孤独死しているといわれています。

寿命が延び、一人暮らしをする人が増えてきているので、加齢や配偶者の死からセルフネグレクトに陥り、孤独死していく人が今後さらに増えていくかもしれません。セルフネグレクトから孤独死に至るまでには、住まいがごみ屋敷になってしまうケースも多く、セルフネグレクトを防ぐことが、社会全体の課題となりつつあるようです。

 

 

3.「セルフネグレクト」を防ぐためにできること

多くの専門家がセルフネグレクト問題について意見を述べ、どのような解決方法があるかを検討していますが、具体的な解決方法は見つかっていません。

 

行政のサポートができること

セルフネグレクトに陥ってしまった人を危険な状態から救うためには、どのようなサポートが必要でしょうか?

著しく健康を害している人については、治療を受けられるように手配をする。親族などに連絡を取って現状を伝え、サポートが可能かどうか相談する。一人で生活していくことが難しい場合は、施設への入居を手配する。

こういったケアは、地域の民生委員や、地域包括支援センターの担当者に相談して対応してもらうことができます。しかし、今後こういったケースがもっと増えてきた場合、地域のサポートだけでは対応しきれなくなる可能性も考えられます。

セルフネグレクトやごみ屋敷問題については、自治体、国からのより積極的な対応が必要になっていくかもしれません。

 

セルフネグレクトを予防するためにできること

セルフネグレクトに陥ってしまうと、自分から助けを求めることも難しくなってしまうので、誰かが気づいてあげることがとても重要になってきます。

しかし多くの場合、セルフネグレクトになってしまう人は一人暮らしで、親族がいないか、ほとんど付き合いがないというケースが多いようです。近所の人との付き合いもないため、困った状況になってしまっていることに、周りが気づくことができません。

 

特に年配の方が一人で住んでいるような場合は、郵便受けに新聞や郵便物が溜まっていないかどうか、水道などのメーターが動いているかどうかといったことから、何か問題が起きていないかどうかを判断することができます。

一人暮らしの方の様子を誰かが定期的にチェックする体制があれば、セルフネグレクトに陥ってしまっている人を救うことができるかもしれません。しかしそのためにかかる莫大な額のお金とたくさんの手間を誰が負担するのか?ということを考えると、実現は難しそうです。

地域の人が協力し合って、気づいた人が声をかけるという、小さなことを積み重ねていくことが大切なのかもしれません。

 

 

4.まとめ

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深刻な状況になりつつあるごみ屋敷問題の大きな原因のひとつとなっている、セルフネグレクト。その実態と解決に向けた取り組みについてご紹介しました。

残念ながら、解決への道筋はまだ定まっていません。地域と行政のサポートだけでなく、自治体や国がより積極的に対策をとっていくことで、解決の可能性が高まっていくかもしれません。