実家の片付けをする際に取り上げられる問題の一つに、片付けが終わったあとの実家をどうするか? ということがあります。
誰も住む人がいなくなってしまった実家を空き家にしてしまわないためには、一体、どうすればよいのでしょうか?
1.実家に住む人がいなくなってしまったらどうする?
親と一緒に二世帯、三世帯で暮らすという文化は、日本ではどちらかというと珍しいケースになりつつあるようです。親も子もそれぞれ別世帯で離れて暮らし、遠方にある実家には年老いた両親だけが暮らしているというケースも少なくありません。
親が施設に移ったり、あるいは亡くなって、実家に住む人がいなくなってしまったら、残された家をどのように管理すればよいのでしょう。
近年、誰も住む人がいなくなった実家が空き家になり、放置されてしまうという事例が多く発生し、社会的な問題になっています。なぜ、親が住まなくなった実家は空き家になってしまうのでしょうか?
実家を子どもが引き継げない理由とは?
もし可能であれば、子どもや親族が相続してそこに住むという方法がベストですが、誰もがそうできるわけではありません。
遠すぎて通勤が難しい、子どもたちが転校しなければならない、実家のある地域では生活が不便であるなど、物理的な事情。相続の対象となる人数が多く、誰がそこに住むべきか意見がまとまらないといった事情もあるでしょう。
かといって、思い出のたくさんつまった実家をすぐに取り壊したり、売ってしまうのはなかなか決心がつきかねるところでもあります。そのため、空き家になった実家が長く放置されてしまうという事態が起きていると考えられます。
誰も住む人がいなくなった実家をどうすべきか?
残された実家に誰も住む人がいない場合、「貸す」、「売る」、「解体する」という方法が考えられます。
税金が安くなるので、とりあえず空き家のまま放置しているという方もいらっしゃると思いますが、2016年に空き家対策特別措置法という法律が制定され、空き家の管理状況についてのチェックが行われるようになりました。適切に管理されていない空き家には、罰金のほか、危険度が高い場合には行政による解体も可能になっています。
場合によっては高額の税金が課せられるようになってしまうので、空き家になっている実家は、思い切って処分するか、有効に活用する方法を考えるべきかもしれません。
2.空き家になった実家を活用する方法
空き家になった実家を維持し続けたい場合、賃貸にして人に貸す方法がおすすめです。
人が住まなくなった家はどんどん劣化が進み、老朽化していきますが、誰かに住んでもらうことで建物の状態を維持することができます。
住んでいない実家を賃貸にするメリット
実家を空き家のまま持ち続けていると、定期的に風通しをしたり、水回りのチェックなど、日常的な管理が欠かせません。実家が遠方にある場合は管理が不十分になってしまったり、定期的な管理が負担になってしまうケースがよくあります。
実家を人に貸すことで定期的な管理から解放され、さらに、家賃収入を得ることができます。
実家を賃貸にするためにすべきこと
家が古くなって傷んでいる場合は、リフォームをすることで、より良い条件で家を貸すことができます。
また、口頭での約束だけで親戚や知り合いに貸してしまうと、あとからトラブルになってしまうケースがあります。賃貸にする場合は、できれば大手の管理会社や不動産会社を通しておくほうが安心です。
3.空き家になった実家を処分するには?
実家に誰も住む予定がないのであれば、思い切って手放してしまうほうがよいケースもあります。
実家を売る場合の手続き上の注意点
誰も住まなくなった実家を売る場合、まず、家の所有者をはっきりさせておく必要があります。
まず、親が亡くなっている場合は相続者を決定し、登記などの手続きを済ませてから売らなければなりません。
親の存命中で、病気などの理由で、親が自分で手続きを行うことが難しい場合は、委任状を作成するか、成年後見人を立てて手続きを行います。一旦、子どもの名義に移してから家を売るという方法もありますが、この場合は生前贈与となりますので、贈与税がかかってしまいます。
この、税金の問題について、次の章でご説明します。
実家を売る場合の税金の問題
家を売ると高額の売却代金が手もとに入ってくるわけですから、当然、所得税がかかります。所得税は売却代金から必要経費を差し引いた金額のおよそ20%という計算になりますが、購入してから5年未満の住宅の場合は、およそ39%という税率になってしまうので注意が必要です。
例)1000万円で実家を売って、経費が100万円かかった場合
1) 5年以上住んでいる ⇒ 900万円×20%=180万円の所得税がかかる
2) 購入してから5年未満 ⇒ 900万円×39%=351万円の所得税がかかる
所得税だけで大変なことになってしまいそうですが、実は、住宅については3000万円の特別控除を受けることができるので大丈夫なのです。
住居の場合、売却代金から必要経費を差し引いた金額から、さらに3000万円を引いた金額が0円以下であれば所得税はかかりません。ただし、親族に売る場合は対象外になるなど、いくつかの条件がありますので注意が必要です。また、特別控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。
実家の名義を変える場合の税金の問題
子ども(または相続者)の名義で実家を売る場合は、所得税に加えて、相続税(または贈与税)を支払うことになります。
親が亡くなってから実家を譲り受けた場合は、相続税がかかります。親の存命中に家を譲り受ける場合は、贈与税がかかります。細かな条件があるため、どちらの税金が高くなるかをはっきりさせることは簡単ではありません。税金をできるだけ安く抑えたいという場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続してから実家を売却する場合でも、条件によっては、3000万円の特別控除を受けることができます。
実家を解体して有効活用する方法
老朽化した住宅や、あまりに古い住宅は倒壊の危険があります。長く放置し続けると、維持管理に高額の費用がかかってしまうので、早めに取り壊しを検討することをおすすめします。
更地にすると税金が高くなってしまいますが、駐車場やトランクルームの経営、テナントとして利用するなど有効活用することができます。
4.空き家対策特別措置法とは?
正式名称は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」という国の法律です。
具体的に何をする法律かというと、自治体の担当者が、持ち主の許可を得なくても空き家の中に入ることができ、管理状態が悪い場合は持ち主にきちんと管理するよう命令することができる。さらに悪質なケースでは、自治体が強制的に解体することができるというものです。
もちろん、住宅を空き家のまま所有することは違法ではありません。ですが、誰も住んでいない住宅をきちんと管理せず、空き家のまま放置していることで、その地域で暮らしている人に大変な迷惑をかけ続けているというケースがあまりにも多いため、このような法律が定められることになりました。
自分の家の隣に、雑草が生い茂り、ごみが放置されたままの空き家があったとしたらどうでしょう? 窓が割れて、空き巣が忍び込んでいたり、不審者が住み着いてしまうかもしれません。壊れた屋根の瓦が、台風で飛ばされてくるかもしれません。もしそうなったとしても、持ち主がそこにいなければ注意することもできませんし、個人の敷地内には、警察でも勝手に立ち入ることはできないのです。
2016年に空き家対策特別措置法が制定されたことで、ようやく、地域に暮らす人の安全を守るための取り組みができるようになりました。
5.まとめ
誰も住んでいない実家を空き家にしないための方法をご紹介しました。
地域の安全のため、空き家を有効活用する取り組みは、今後さらに進められていくことが予想されるので、早めの空き家対策をおすすめします。