人生の終わりに向けた活動「終活」のブームから10年が経ち、現在では、生前整理やエンディングノートの作成と言った活動が一般的に行われるようになってきています。
終活を行ううえで、多くの人が頭を悩ませるのが、相続の問題。
蓄えてきた大切なお金、貴金属や有価証券、不動産といった資産を、残される家族にどのように配分するか。配偶者や子どもがいない場合は、資産が誰のもとに渡ってしまうのか。相続を考えている人にとって頭の痛い問題です。
そんな中で、遺産相続の方法のひとつである「遺贈寄付」が、近年注目を集めています。遺贈寄付とはどのようなものなのでしょうか?
その具体的な方法について、ご紹介したいと思います。
1.遺産相続に苦労するケースが続出?
遺産相続にからむもめごとは、今も昔も変わらず、世界中のいたるところで起きているようです。骨肉の争いなんていう、週刊誌の記事タイトルでもおなじみですね。
「うちには貯金もないし大した財産もないから、相続でもめることなんてないない!」と、考えている方もたくさんいらっしゃると思います。しかし、相続争いは資産家だけの問題ではありません。ほんのわずかな金額の遺産から争いが起こることも珍しくないのです。
例えば、都内の一戸建ての家に住んでいるとしたら、それだけでもう大きな財産になります。苦労して手に入れたマイホームを配偶者や子どもたちに残してあげたいと考えていたとしても、複数の人間で一軒の家を分け合うことはできません。誰か一人がいい思いをして他があきらめるか、思い出のつまった家を手放して現金を分け合うか、納得のいくまで徹底的に争うか。いずれにしても、全員が納得できる分配方法を見つけることは至難の業となってしまうでしょう。
こういった争いやトラブルを避けるために、遺産の全部あるいは一部を相続人以外に寄付するという相続の方法に注目が集まっています。
2.人生最後の社会貢献「遺贈寄付」とは?
一生の間に一度でも、寄付と名のつく行為をしたことがある方はかなりいらっしゃると思います。寄付は、被災地にお金や生活用品を送ることだけではありません。赤十字の募金や、あしなが育英会の募金、コンビニの店頭に置かれているボックスに100円を入れることも立派な寄付のひとつです。
日本には昔から、助け合いや譲り合いの精神が根付いています。地域や同郷の者同士だけでなく、知らない人同士が助け合うボランティア活動や寄付という行為も全国に広がってきており、個人だけでなく、社会に貢献するという考え方も一般的になりつつあります。
そういったことから、自分が亡くなったあとの遺産相続の際にも、寄付による社会貢献を検討する人が増えてきているそうです。
新しい相続のかたち「遺贈寄付」とは?
死後に残される財産は、遺書での指定がなければ、法定相続人に分割されることになります。身近な親戚がいなければ遠縁の血縁者のものに、相続人が一人もいなければ、財産は全て国のものとなります。
「せっかくの遺産がまったく付き合いのない遠縁の親戚や国の財産になってしまうくらいなら、必要としている人に譲って役立ててもらいたい」という方におすすめの方法が、遺贈寄付です。
事前に遺書を作成しておくことで、法定相続人以外の特定の人や団体などに、財産を無償で贈与することができます。これが、遺贈寄付です。
贈与する相手は、社会活動を行っているNPO法人や、学校、公共機関、組織、団体など、自分が望む相手を選ぶことができます。
人生最後の社会貢献活動として、ボランティア団体などに財産を遺贈寄付するという考え方が、日本全国に広がってきています。
3.遺贈寄付をする方法
学校、研究機関、特定の団体や法人組織など、寄付をしたい相手が決まっている場合は、直接その団体の窓口に相談または申し込みをすることができます。
特に決まっていない場合は、日本全国で活動している、遺贈寄付を扱うさまざまな団体や機関に、具体的な寄付内容や方法、寄付の送り先について相談してみる方法がおすすめです。税金の問題や手続きについても直接サポートしてもらえるので、安心して遺贈寄付を行うことができます。
遺贈寄付は、行う人にとっても受け取る人にとっても価値のある行為ですが、高額の金銭がかかわってくるので、慎重に行う必要があります。
活動内容などに感銘した団体に遺産の全てを寄付したいと思っても、簡単にポンと譲れるわけではありません。税金、そして、相続人が存在する場合の遺留分も考慮しなければならないので注意が必要です。
遺贈寄付をする場合の3つの注意点
せっかくの寄付行為がのちのトラブルにつながってしまうことのないように、次の3つのポイントについて、事前にしっかりと準備をしておくことが大切です。
1) 相続人がいる場合は「遺留分」に注意!
2) 「包括遺贈」と「特定遺贈」の違い
3) 相続税についての問題
1) 相続人がいる場合は「遺留分」に注意!
遺贈寄付を検討している方に配偶者や子どもがいる場合には、遺留分を請求されるケースがあるので注意が必要です。
遺留分とは、法定相続人に法律で保証されている権利で、正式な遺言書で遺産の全額が寄付されてしまった場合でも、最大で遺産総額の2分の1に相当する額を請求することができるというものです。この点を無視して遺産を寄付してしまうと、寄贈された団体が遺産を返さなければならない事態になってしまいます。
配偶者や子どもに遺産を残さない場合は、事前に了承を得ておく必要があります。配偶者と子ども以外の相続人しかいない場合は、考慮する必要はありません。
2) 「包括遺贈」と「特定遺贈」の違い
遺贈寄付を行うには、遺産の全てを贈る「包括遺贈」と、遺産の一部を贈る「特定遺贈」のどちらかの方法を選ぶことになります。
包括遺贈をする場合には注意が必要で、万が一借金が見つかった場合は返済する義務も追わなければなりません。マイナスの遺産の可能性がある場合は特に、特定遺贈にしておくほうが安心です。
3) 相続税についての問題
遺贈寄付される遺産は現金とは限りません。
有価証券、貴金属、不動産などすべての遺産をまとめて寄付することができますが、状況によっては相続税、譲渡税などの税金の支払い義務が生じる可能性があります。事前に売却して現金を寄付するか、事前に専門家に相談しておくことをおすすめします。
4.遺贈寄付の相談を受け付けている団体
遺贈寄付について検討されている方は、ぜひ、遺贈寄付をサポートしている団体に相談することをおすすめします。
国内で活動している団体をご紹介します。
公益財団法人 日本財団
「遺贈寄付サポートセンター」
https://izo-kifu.jp/
遺贈寄付推進機構株式会社
https://www.wizo-kifu.com/
認定特定非営利活動法人
日本ファンドレイジング協会
https://jfra.jp/
一般社団法人 全国レガシーギフト協会
「いぞう寄付の窓口」
https://izoukifu.jp/
認定NPO法人 国際協力NGPセンター
http://www.janic.org/
公益財団法人 公益法人協会
http://www.kohokyo.or.jp/
公益財団法人 パブリックリソース財団
http://www.public.or.jp/PRF/disposition/
公益財団法人日本ユニセフ協会
「ユニセフ遺産寄付プログラム レガシー相談室」
https://www.unicef.or.jp/cooperate/coop_inh0.html
5.まとめ
大切な資産を次の世代に残すための方法「遺贈寄付」について、ご紹介しました。
国内外のさまざまな組織、機関、学校やNPO団体などが、遺贈寄付を受け付けています。相談や具体的な手続きをサポートする団体もありますので、寄付を検討している方はぜひ問い合わせてみてはいかがでしょうか。