現代の社会問題としてゴミ屋敷問題が注目されています。みなさんもニュースで目にすることが多いのではないでしょうか。
実は、マンションが1棟あったらそのうち1部屋はゴミ屋敷状態になってしまっているというほど、ゴミ屋敷問題は身近な問題となっています。
そんなゴミ屋敷問題ですが、ゴミ屋敷に暮らしている方にはどんな人が多いのでしょうか?
「単に片付けられないだらしない人」?それとも「不用品を集めるのが趣味の変わった人」でしょうか?
ゴミ屋敷化してしまう理由は単純ではありません。
私たちが知らないだけで、ゴミ屋敷を作ってしまう原因はさまざまなのです。
また、ゴミ屋敷が原因で虫が発生し、近隣への被害も多くみられます。
今回は、ゴミ屋敷を作ってしまう心理からゴミ屋敷が引き起こす健康被害の実態、かかりやすくなる病気や感染症のリスク、近隣の住宅がゴミ屋敷だったときの対処法をご紹介していきます。
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1. ゴミ屋敷が出来上がるパターンとは?
どんなに深刻な状態のゴミ屋敷も、始めからゴミで溢れていたわけではありません。始めは、ほんの少しのゴミが溜まることから始まります。
ゴミ屋敷を作ってしまう人は生真面目で、ゴミの分別ルールもしっかり守る人が陥る場合が多いのです。
意外かもしれませんが、適当な人ほど実は簡単にゴミを捨てられるので、ゴミ屋敷になりにくいというわけです。
実は生真面目な人が多い
生真面目な人がゴミを捨てた際に、分別のことについて近所の人に細かく口出しをされてゴミを出すのが怖くなってしまって溜め込むようになってしまったというケースや、自治体によっては分別ルールが細かすぎたり、ゴミの捨て方自体が複雑すぎて捨て方が分からず溜まっていってしまったというきっかけもあります。
仕事が忙しくてゴミを捨てられない場合も
またゴミ屋敷を作ってしまいやすい人に多い傾向として、看護師や教師の方など帰宅時間が遅くなりやすい多忙な職業の方というのがあります。
看護師の方などは夜勤がありますので、ゴミを回収する時間に間に合わなかったり、多忙でストレスも多く家に帰るとベッドに倒れ込む生活で片付けをする暇がない、などでどんどんゴミ捨てが面倒になってしまうというパターンが多いです。
どちらのパターンもささいなきっかけから、人付き合いを避けて家に閉じこもるようになり、そこからさらにゴミ捨てが困難な精神状態に陥ってしまいます。そして、ゴミ屋敷から抜け出せなくなってしまうのです。
2.ゴミ屋敷になってしまう原因は、”病気”かも?
そもそも、どうしてゴミ屋敷を作ってしまうのでしょうか?
ゴミ屋敷ができてしまうのは、単にゴミ捨てが面倒くさいという理由からだけではありません。
身体疾患、精神疾患、認知症、そのほかさまざまなストレスや生活環境の問題からゴミ捨てなどの片付けができなくなり、さらにはゴミ捨てが困難な精神状態に陥ってしまいます。
「ゴミ屋敷にしてしまう病気」という状態というわけです。これは決して他人事ではなく、ストレス社会と言われる現代においては誰がなってもおかしくない身近な病気です。
では、原因となりうる病気をさらに詳しく見ていきましょう。
ゴミ屋敷の原因となりうる6つの”病気”
① 認知症
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを指します。
脳は、人間の活動をほとんどコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。したがって、ゴミをゴミと認識できなってしまう・・・ということが起きてくるのです。
② うつ病
うつ病とは、日常生活に支障が出るほどの強い気分の落ち込み、意欲の低下が続く病気です。
何もする気力が起きず、日々のちょっとした片付けもできなくなり、気付いたらゴミ屋敷になってしまうというケースが多いようです。
うつ病が起こるはっきりした原因は分かっていませんが、環境の変化やストレスなどによって、脳のはたらきに何らかの問題が生じていると考えられています。また、ホルモンバランスが乱れる病気や、病気の治療薬の副作用によって生じる場合もあります。
③ 強迫性障害
強迫性障害とは、強い不安や恐怖、こだわりがあることで、“やりすぎ”ともいえる考えや行動を止めることができず、日常生活に支障が出てしまう病気のことを言い、“強迫症”とも呼ばれています。
自分の意思とは反して、ゴミを溜め続けてしまうケースもあり、ゴミ屋敷を作る原因となってしまうのです。
強迫性障害もはっきりとした原因は分かっていませんが、性格や生まれてから育つまでの出来事、ストレス、感染症などが関係していると考えられています。
④ 統合失調症
統合失調症は、脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。
妄想や極端な思考から、健康な人からすると意味のわからない理由でゴミを集めるようになってしまい、ゴミ屋敷ができてしまうようです。
ほかの慢性の病気と同じように長い経過をたどりやすいですが、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、多くの患者さんが長期的な回復を期待できるようになっています。
⑤ 溜め込み症
溜め込み症は、多くの人にとって不要で価値のないものを大量に溜め込み、手放すことができない障害です。
もっともよく溜め込んでしまうものは新聞、雑誌、古い服、かばん、本、郵便物、書類などですが、ほかのどんなものでも対象になり得ます。
溜め込み症の方は、集めた物を捨てることに強い苦痛を感じます。
ゴミとして捨てるだけでなく、リサイクルに出す、売却する、譲渡するなどほかの手段による処分でも同様です。
なぜなら、自分が溜め込んだものに対して「まだ使える」と価値を感じたり、感情的に強い愛着をもっていたりするからです。その物の運命に責任を感じ、手放すことを「かわいそう」と思い、捨てることに恐怖感を持っていることもあります。
こういった症状が原因でゴミを手放せなくなり、ゴミ屋敷となってしまうのです。
⑥ セルフネグレクト
セルフネグレクトとは生活を維持する能力と意欲の欠如、極端な自己肯定感の低下、それによる自身の健康や安全を損なっている状態を指します。
「生活を維持する能力」というのは入浴や歯磨き、掃除や洗濯などを通して身の回りを整えること、体の調子が悪ければ病院に行くといったような自分自身の体をケアすることを指します。
自分自身に関心がなくなり、食事や入浴、掃除や片付けさえできなくなって家がゴミ屋敷になり、体調を崩した結果、最悪の場合自殺や孤独死につながっていってしまうのです。
何より厄介な点は、自身に関心がなくなってしまうが故にセルフネグレクトは自覚することが難しく、周囲の人に助けを求められないことにあります。
詳しくはこちらをご参照ください。
人から理解されにくい病気である場合が多く、周囲からは距離を置かれてしまうことが多いです。そのため、周りから受診を勧められる機会が少なく、そのまま症状が悪化してしまう危険性があります。
最悪のケースにならないよう、早めに受診したり相談することを強くお勧めします。
3.虫が原因?!ゴミ屋敷にいると一体どんな病気になるの?
”病気”がゴミ屋敷を作る、という話をこれまでしてきましたが今度は「ゴミ屋敷にいることでなってしまう病気」についてです。
ゴミ屋敷とは文字通りゴミだらけの家のことで、単に「物」が多いだけなら病気にはなりません。周りを埋め尽くしているのが不衛生な「ゴミ」であることで、様々な病気になりやすくなってしまうのです。
ゴミに集まるさまざまな害虫が危険な細菌やウィルスを媒介し、人間に病気をもたらします。また、ホコリやカビがつまった空間で長く過ごすことで、健康に悪影響を及ぼします。
ゴミ屋敷の奥に潜む恐ろしい害虫
ゴミ屋敷に堆積するゴミ山を作っているのは、衣類や紙類、コンビニのビニール袋、ペットボトルや缶、本や雑誌やDVDばかりではありません。
食べかけの弁当箱、お菓子の残り、食べかす、腐った食べ物なども堆積しています。そこに、ゴキブリやハエ、ネズミなどの害虫が集まってくるのです。腐った食べ物に卵を産みつけ、ハエが大量発生することもあります。
大量発生した害虫は、ゴミ屋敷だけでなく近隣の住宅へも侵入し、被害を拡大させていきます。
害虫が媒介する恐ろしい病気
ゴミ屋敷に発生するハエ、ダニ、ゴキブリなどの害虫は、さまざまな細菌や恐ろしいウィルスを媒介し、人に病気をもたらします。
特に、腐敗した食べ物や汚物などの上を歩きまわるハエは、足についた細菌などを人が生活する場所に運びます。ハエは大腸菌や赤痢菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、O-157などを媒介し、人に感染させます。
O-157は死に至ることもあるとても危険な細菌のひとつです。
また、長年掃除をせずに住み続けた部屋にはホコリが堆積し、その中にはダニがびっしりと繁殖しています。
ダニが媒介する病気には、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱、つつが虫病、ダニ媒介性脳炎などがあり、嘔吐や下痢、発熱、頭痛、けいれん、意識障害、出血症状などさまざまな症状を引き起こします。重症化して死に至ることもあります。
アレルギー症状
ゴミ屋敷には、ハウスダスト、ホコリ、カビが充満しています。その空気を吸い続けることで、深刻なアレルギー症状を引き起こします。
皮膚の赤みや腫れ、じんましん、かゆみ、目の充血や目のかゆみ、くしゃみ、鼻づまり、咳などさまざまなトラブルが起こります。呼吸困難などの症状を引き起こすこともあります。
ゴミ屋敷での生活が及ぼす精神への影響
ゴミ屋敷に住む人は、自分で納得して、満足してゴミ屋敷で暮らしているのでしょうか?
テレビのニュースで報道される、ゴミ集めを絶対にやめようとしないゴミ屋敷の住人は、いつも怒り狂っています。集めたゴミに執着し、ゴミを溜めることで何かを満たそうとしていますが、いつもフラストレーションでいっぱいです。
ゴミに囲まれた、不衛生で不潔な環境での生活が、彼の健康だけでなく精神も蝕んでいるのです。ゴミ屋敷で暮らし続けることは、とても危険なことなのです。
3.隣人や清掃する人が気をつけるべきことは?
自宅がゴミ屋敷になって困るのは、住人だけではありません。
ゴミ屋敷による病気・健康被害は、近隣の住人や、住人の代理で片付けを行う人にも及びます。
ハエ・ゴキブリ・ダニなどの害虫に注意
ゴミ屋敷で発生した害虫は、近隣の住居にも侵入してきます。
特に夏場は腐敗が進むので、腐敗した食べ物にハエが卵を産みつけ大量発生します。大量発生したハエが近隣の住宅に侵入し、危険な病気やウィルスを運ぶ可能性があります。虫よけ、防虫剤などでできるだけ防止するようにしましょう。
ゴミ屋敷に住んでいる動物や害虫に直接触れることのないよう、十分な注意が必要です。
清掃の際はなるべく換気を行いながら片付けたいものですが、近隣への迷惑を考えるとドアを閉めて行ったほうが良さそうです。
ゴミ屋敷近隣の住人が気をつけなければいけないこと
ゴミ屋敷の住人は精神的な問題を抱えていることが多いので、個人で直接話し合いをすると、トラブルに巻き込まれてしまう危険があります。
話をするときは必ず近隣の住民と一緒に、警察や行政にも相談しながら、話し合いを進めるようにしましょう。
こちらの記事もご参照ください。
ゴミ屋敷対策で行政に頼ることは出来るのか?対応方法について解説
清掃をする人が気をつけなければいけないこと
ゴミ屋敷を片付ける場合は、プロの清掃業者であっても十分に気を付けて作業を進める必要があります。
大量のゴミの下には、ダニやゴキブリ、ネズミなどが隠れており、不用意にゴミを動かすと害虫が一斉に出てきてしまう危険があります。
また、堆積したゴミが崩れてケガをする恐れもあります。いきなり片付けるのではなく、計画的に進めていく必要があります。
4.ゴミ屋敷を片付けるには?
出来始めて日の浅いゴミ屋敷であっても、片付け作業を行う場合には十分な準備をして取り組むことが大切です。
無理だと判断したら、すぐにやめてプロに任せることも重要なポイントです。
全身をガードする防護服を用意する
中身の入ったペットボトルなどが多く散乱していて、それを踏んでしまうことがあるので、厚手で水を通さない素材の長袖長ズボンが必須です。
さらに、手袋、マスク、ゴーグル、帽子を必ず身につけ、肌が露出しているところがないよう全身を覆います。
散乱しているものが割れていて手足を切った際に、ばい菌が入り感染症などの恐ろしい病気になる危険もありますので、しっかりとガードしケガのないようにしましょう。
足元は、靴下だけだと何かを踏んだときに危険ですし、おそらく破棄しなくてはいけないほど汚れますので、スリッパか滑りにくい長靴を履くと安心です。
食べ残しやゴミが腐敗した臭い、害虫の糞などから発するアンモニア臭など、危険な刺激臭が漂っていることが多いので、マスクを重ねてしっかり口元を覆うようにしましょう。臭いだけでなく、ホコリを吸い込むことによる病気の感染を防ぐ目的からもマスクはとても有効です。
ゴミ屋敷の片づけを始める前にすべきこと
いきなりゴミ山を崩していくのはとても危険です。ゴミの状態にもよりますが、殺虫剤を使って害虫を駆除しながら片付けを進めていくことで、害虫に触れてしまう危険を減らすことができます。
本格的なゴミ屋敷の片付けはプロに任せる
危険なレベルのゴミ屋敷の片付けはできるだけプロの業者に依頼し、素人がむやみに手を出さないようにしましょう。
業者に依頼するとお金がかかりますが、害虫や病気、思わぬケガなどの危険を考えると、プロに任せるほうが全体に安心です。
5.まとめ
ゴミ屋敷が原因で起きる病気や健康被害についてご紹介しました。
病気やケガ、多忙が原因でゴミが捨てられずそこからがずるずるゴミ屋敷になってしまうケースや、セルフネグレクトなどの精神的な病気が原因でゴミ屋敷になってしまうこともあるので、一概に「本人がだらしがないから」とは言えないことがわかったのではないでしょうか?
不衛生な環境で過ごしていると、本人も気づかないうちに健康が蝕まれ、精神的にも悪影響を及ぼしていきます。取り返しのつかない病気になってしまう前に、ゴミ屋敷から抜け出すための一歩を踏み出すことが大切です。
もしご本人やご家族がゴミ屋敷・モノ屋敷でお悩みでしたらこちらまでご相談ください!