ごみ屋敷の原因のひとつと考えられている「ホーディング」とは何か?

目次

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大きな社会問題となっている、ごみ屋敷。

日本でもようやく、行政による強制撤去を可能にする法律が、自治体ごとに整備されるようになりつつあります。

 

しかし、近隣地域に大きな影響を及ぼすごみ屋敷の解決は、実際かなり難しいという現実があります。自治体が強制的にごみを撤去するにはいくつもの条件があり、ごみ屋敷だからといってすぐに強制執行できるわけではありません。

ごみ屋敷問題の解決には、もっと根本的な解決が必要なのかもしれません。

 

今回は、海外のごみ屋敷問題で研究が進められている、「ホーディング」についてご紹介したいと思います。

 

 

1.海外でも話題のごみ屋敷!

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アメリカやイギリス、アジア諸国など、ごみ屋敷問題は海外でも大きな話題になっています。

地域の住民に悪影響を及ぼしているだけでなく、ごみ屋敷の中で暮らしていた住人が孤独死していたり、ごみに埋もれて亡くなるといったニュースも報道されており、早急な解決が求められています。

 

そんな中で注目を集めているのが、「どうしてごみ屋敷をつくってしまうのか」ということについての研究です。

ごみ屋敷をつくってしまう人の特徴としては、

・忙しすぎて、ごみ捨てや片付けができない
・高齢、病気やケガなどの理由で体が動かせず、ごみ捨てや片付けができない
・認知症などの病気のせいで、身の回りの世話ができない
・不用品を捨てられず物をため込んでしまう

といった理由が考えられています。

 

病気などで物理的にごみ捨てや、身の回りの片付けができないケースについては、行政のサポートで解決できる可能性があります。

しかし、ごみ屋敷問題のもっとも大きな原因ではないかと考えられているのは、「捨てられず物をため込んでしまう」ケース。本人の意志で物をため込み、場合によっては外からごみを拾ってきてしまうので、簡単に解決することはできません。

 

物をためこんでしまうことを、英語では「hoarding(ホーディング)」といいます。アメリカでは、ホーディングを精神障害の一種ととらえ、その研究が進められています。

 

 

2.ごみ屋敷の原因?「ホーディング」とは何か?

日本では、ごみ屋敷をつくってしまう人のことを指す特別な呼び方がありません。

強いて言えば、「ごみ屋敷の住人」という呼び方がありますが、この中には、物理的にごみを捨てられない人や、病気でごみ捨てや身の回りの片付けができない人たちも含まれます。最近では「セルフネグレクト」という言葉を使うケースもありますが、これは、認知症などの病気などで身の回りの片付けが難しい人を指す場合が多いようです。

 

物をため込んでごみ屋敷を作ってしまう症状や、そのような状態にある人を指す言葉は日本語にはないのですが、英語の「hoarding(ホーディング)」という言葉が日本でも使われるようになってきています。ちなみに、ホーディングは、「ためこみ症」と訳されることがあります。

 

英語のhoard(ホード)には、蓄える、貯蓄する、買いだめするといった意味があり、そこから、物をため込み手放さないという意味で使われるようになりました。

・hoard(ホード):物をため込むという意味の動詞
・hoarding(ホーディング):物をため込むこと
・hoarder(ホーダー):物をため込む人

 

ホーディングって病気なの?

ホーディングは、ホーディング障害とも呼ばれる精神障害の一種として、現在では広く認識されるようになってきており、アメリカでは、精神疾患のひとつとして定義されています。日本でも、その定義に基づく診断を受けることができます。

しかし、ホーディング障害が病気であり、具体的にどのような症状があり、どのような治療法があるかといったことはまだ明確になっているわけではありません。ホーディングについては研究段階にあり、これからさらなる解明、治療法の研究が期待されています。

 

 

3.いろいろなタイプの「ホーディング」

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ホーディングは、「他の人にとってほとんど価値がないと思われる物を大量にため込み、処分できない行為」と、定義されています。

ホーディングの対象は、衣料品や家財道具、消耗品、手紙や書類、本、動物など多岐にわたります。例えば、本の収集は趣味のひとつとして考えることもできますが、大量の本によって室内の生活空間が圧迫され、正常な生活が不可能なほどになっている状態はホーディングであると考えられます。集める対象が、段ボールや粗大ごみ、食品や生ものなど腐りやすいものになってしまうと、ごみ屋敷化が加速していきます。

 

ホーディング障害は精神疾患?

アメリカ精神医学会により出版された『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』により、ホーディング障害は強迫性障害(OCD)または、精神疾患の症状のひとつとして分類されています。

強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)は、それが不合理な意味のない行為だとわかっていながらその行為を繰り返してしまうことを抑えられない病気です。強迫性障害は、脳内の神経伝達物質の機能に異常が発生することが原因で起きると考えられています。

強迫性障害を伴わないホーディング障害については、物をため込まずにはいられない人の心理状態を分析する試みが行われています。物に対する執着の理由としては、不安や寂しさをまぎらわせてくれる、自分を保護してくれるという存在として物をとらえているといったケースがあげられます。

ホーディング障害の患者は、物の人格化、擬人化、自分の一部としての同一視を行っていると考えられています。そのため、物を捨てられることに対して激しく抵抗します。

 

 

4.「ホーディング」への対応や治療方法

単に物を大量に集めているだけの場合は、ホーディング障害とはいえません。膨大な量の収集物であっても、整理・管理され、家庭環境が安全に保たれているのであれば、ごみ屋敷になってしまう心配もありません。

 

ホーディング障害かどうかを調べるには、いくつかの判断基準があります。その一例としては、

・物を捨てることに苦痛をともなう
・生活空間としての機能が損なわれている
・物をため込むことで、社会活動や日常生活に支障をきたしている
といったことが定義されています。

 

ホーディング障害の治療方法

もし、ホーディング障害と診断されたら、どのような対処、治療法があるのでしょうか?

強迫性障害の治療法のひとつに、薬物療法(薬による治療)があります。SSRIという抗うつ薬で患者の強い不安感をやわらげることができます。

薬物療法により状態が落ち着いたところで、認知行動療法を行います。物を処分し、その状態を維持することを目指し、家族、行政、清掃の専門家など第三者のサポートのもと、少しずつホーディングを改善していきます。

 

ホーディング障害の治療に最も大切なものとは?

ごみ屋敷問題の大きな原因のひとつであるホーディング障害、その治療のために最も大切なものは、治したいという本人の意志です。本人が望まなければ、診察を受けてホーディング障害かどうかを判断することも、治療を受けることもできません。

すでにごみ屋敷状態で暮らしている場合、本人に治療を受けさせること自体難しいかもしれません。カウンセラーなどのサポートを受けながら、少しずつ対話を進めていくことで、治療の必要性を本人に理解してもらうことが大事です。

 

 

5.まとめ

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世界的な社会問題にもなっているごみ屋敷問題について、その原因のひとつとして考えられている「ホーディング」をご紹介しました。

現在、アメリカを中心として、ホーディング障害についての研究が進められています。ホーディング障害についての研究が進み、治療法が確立されることで、ごみ屋敷問題の解決につながっていくかもしれません。

 

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