すっかりおなじみになった、遺品整理、生前整理に続き、老前整理というワードが注目を集めています。
生前整理と老前整理、一体何が違うのでしょうか?
医療の進歩で寿命がどんどん長くなり、人生100年時代といわれる今、老前整理が必要とされる理由、老前整理をする意味と、その具体的な方法についてご紹介したいと思います。
1.生前整理ならぬ老前整理って、一体何?
2009年頃から、「終活」「エンディング」という言葉が注目されるようになりました。
まだ元気なうちに、自分が亡くなったあとに財産や家をどうしたいか、銀行の通帳、保険の証書などのしまい場所、自分が望むお葬式の方法などをできるだけ明確にしておくほうが良いという考え方が、広まってきたのです。
これは、自分自身が親の遺品整理を行って苦労した経験から、自分の子どもたちに同じ思いをさせないようにという親心から始まったものだといわれています。
趣味の道具、衣類などさまざまな家財道具についても、不要なものは事前に処分して、残された家族が実家を片付ける手間をできるだけ減らしておこうとする、生前整理という考え方も生まれました。
親が亡くなったあとに残された大量の荷物を、ひとつひとつ分別して処分していくのはとても大変な作業です。たとえほんの一部分だけでも生前整理を済ませておくことで、よりスムーズに遺品整理を済ませることができます。
生前整理と老前整理の違いってなに?
生前整理は、自分が亡くなったあとに残される家族のために、存命中に家の中の片付けを進めておくことです。自分自身ではなく、家族のために行います。
これに対し、老前整理は、自分たちのために行います。
日本人の平均寿命は、2017年のデータによると、女性で87.26歳。男性は81.09歳。どちらの数値も右肩上がりに伸び続けており、過去最高の数値を記録しています。
人生100年時代は、それほど遠くない未来にやってくるでしょう。そうしたら、私たちは、年を取ってからの長い長い時間を過ごしていくことになるのです。そのときに、できるだけ快適に暮らせる環境づくりを、年を取って体が思うように動かなくなる前に済ませておくこと。これが、老前整理です。
生前整理についてのおさらい
亡くなる前に片付けを済ませておくことを、生前整理と呼びます。「生前」って、生まれる前という意味では?と、思いませんか?
この場合の「生」は、「往生」を表しています。往生とは、極楽浄土に往って、生まれること。つまり、死ぬことを意味しているのです。ですので、亡くなる前の片付けを、生前整理と呼んでいます。
2.老前整理が注目されている理由
最近のお年寄りは皆とても若々しく、70歳になっても、80歳になっても元気いっぱい!スポーツや習い事にチャレンジしたり、海外旅行を楽しんでいる方々もいらっしゃるようです。
しかし、誰もがそのように過ごせるわけではありません。
還暦を過ぎたばかりの60代の頃には当たり前のようにできていたことが、80代になる頃には難しくなっているかもしれません。階段の上り下り、段差のある場所をスムーズに歩くこと、腕を上げたり、膝を曲げたり。そんなちょっとした動作でさえ、思うようにできなくなってしまう可能性があるのです。
たとえ寿命が長くなっても、老いていくことに変わりはありません。
だからこそ、年を取ってしまう前に、老後の暮らしやすい環境づくりを進めておく必要があるのです。
3.老前整理って具体的に何をするの?
生前整理の場合、不用品を処分したり、着ていない洋服、使っていない食器などを処分して数を減らしたり、家の中の物を減らすことが作業の中心になります。
老前整理の場合も、不用品を減らしていくことが重要なポイントになりますが、目的がちょっと違います。
例えば、洋服を減らしてクローゼットのスペースを空けるのは、洋服の管理や出し入れを楽に行えるようにするため。そして、新しく買った服を収納する場所を確保するためです。
年を取ると体形が変わって、今まで気に入って着ていた洋服が着られなくなったり、細見のジャケットは腕を通すことが難しくなってしまいます。年齢、そのときの状況に合わせた洋服に買い替えることを想定して、たんすのこやしになってしまっている衣類を事前に処分しておくことで、老後の生活をスムーズに送ることができます。
つかいやすい家財道具に買い替える
大きな食器棚にたっぷりとつまった、高価なお皿、コーヒーカップのセット。来客用にそろえた大皿、家族が多かったときに使っていたたくさんの食器などを見直して、要らないものを処分。
少しずつ、軽くて、落としても割れにくいお皿や、食洗器で洗える食器に買い替えていくことで、老後の食生活をスムーズに行うことができます。
上に置いてあるものを下ろしておく
屋根裏部屋、天袋、押入れの上の段、タンスの上など、普段使わない物を収納しておくスペース、とても便利ですよね。でも、椅子に乗らないと物の出し入れができないという問題があります。
今はなんとかこなせていても、80歳になったときに、不安定な椅子の上に立って、物を出し入れするのはとても危険!転んで骨折、頭を打って入院なんていうケースも考えられます。
上の方にしまってあるものは、今のうちに全部下ろして、必要なものとそうでないものとに分類、必要なものは出し入れしやすい場所に収納するようにしておきましょう。
リフォームを考えているなら今のうちに!
家がだんだん古くなって、階段やベランダ、水回りのリフォームが必要になっている方、多いのではないでしょうか?
昔ながらの、天井の高い冷たいタイル貼りの浴室や深い浴槽は、寒さでヒートショックを起こしてしまったり、無理な姿勢で浴槽に入ろうとして滑ってケガをしてしまう危険があります。
狭くて急な階段や、手すりが低くてぐらぐらするようなベランダは、事故の危険がいっぱい!
もし可能なら、早い時期に、バリアフリーの使いやすい水回りやベランダにリフォームしてしまいましょう。老後の心配をする必要がなくなります。
急で危ない階段や、段差の大きい玄関には、ステップや手すりを付ける方法が、簡単でおすすめです。地域によっては、リフォーム工事に対して補助を受けることができるので、ぜひ、市役所などで相談してみてください。
4.いつ始める?老前整理をスタートすべき時期
では、老前整理はいつ頃からスタートすればよいのでしょうか?
定年退職をした60代ぐらいの時期は、子育ても一段落して、時間的な余裕もある、とても恵まれた時期ですね。お金もあり、まだ十分に健康で、旅行や趣味に、忙しく飛び回っていることでしょう。
そんな時期に、老後のことを考えるのは気が早い気もします。
でも、そんな余裕のある時期にこそ、老前整理をスタートしてほしいと思います。「老いは一気にやってくる」のです。
年を取ってから老前整理を始める場合
60代の頃にはまだ仕事やさまざまな事情で忙しく、気が付いたら、体を動かすことがずいぶん難しくなっていたというケースもあると思います。
家財道具を整理して、要らないものを処分したり、リフォーム工事を計画したりなんていうことが、簡単にはできなくなっているかもしれません。
そんなときは、ぜひ、民間の業者が提供するサービスを利用してみてください!
家の片付けや不用品の処分に必要な作業を、プロのスタッフがサポート。リフォーム工事の手配もお任せで依頼することができます。
5.まとめ
近年、注目を集めている「老前整理」について、その必要性、具体的な作業内容、進め方をご紹介しました。
快適な、より良い老後を送るために、できるだけ早く老前整理をスタートすることをおすすめします。